
キメラ抗原受容体のT細胞療法で癌やHIVを完治させる
キメラ抗原受容体という言葉はほとんどの方が聞いたことがない言葉でしょう。現在の医療技術で注目されている治療方法のひとつで、病気自体を攻撃して体を治していくのではなく、キメラ抗原受容体を使って体にある免疫自体を強化するように再プログラムし、病気を攻撃させて治す治療方法です。
現在はいろいろな分野で研究が進められていて、難治性の癌や完治ができないHIVの治療にとても有効だとされています。
キメラ抗原受容体とは
キメラ抗原受容体とは、ここに癌に対して攻撃性のある情報が詰め込まれていて、これを癌患者から採取したT細胞に入れて、再びがん患者に戻すために使われます。
本来自然界にはこのような作用はありませんが、人為的に癌を攻撃するようにプログラムした新しい機能をもともとのT細胞に埋め込むことが出来るものです。
これによって、体内の免疫は普段通りの免疫機能だけでなく、癌をも倒すほどの攻撃力を得て、自分の免疫で癌細胞を攻撃し治していきます。
キメラ抗原受容体の免疫療法
医学会ではキメラ抗原受容体による免疫療法の研究が進められています。
既に臨床試験の段階で予想通りの結果をもたらし、さらにキメラ抗原受容体とT細胞による免疫療法の未来が明るくなったと言えます。
現在は白血病やリンパ腫などの病気で急いで研究が進められています。
製薬会社による研究と臨床試験では90%近い患者からキメラ抗原受容体を取り入れたT細胞による免疫攻撃によって白血病細胞が消えました。
これは誰にでも応用ができるもので、遺伝子を組み替えて病気の原因であるウイルスにたいして攻撃するようにできれば、今後の治療が大きく変わります。
キメラ抗原受容体が癌やHIVを攻撃するまでの流れ
- 患者からT細胞を採取
- 遺伝子組み換えで特定の細胞を認識し攻撃する機能を加える
- T細胞でキメラ抗原受容体の完成
- この細胞を培養
- 患者へ化学療法でキメラ抗原受容体を受け入れやすくする
- キメラ抗原受容体を持つT細胞が患者に戻される
- キメラ抗原受容体は体内でターゲットとなる細胞を発見し攻撃する
キメラ抗原受容体治療に置ける課題と問題点
遺伝子組み換えをして体内で免疫力を強化するため、正常細胞への影響や、攻撃対象細胞が変異するなどしたときの対応、副作用などの問題があります。
またキメラ抗原受容体T細胞を体内に戻した後、どれくらいの期間効果が持続するのか、という部分も未だ臨床試験回数が少なすぎてはっきりしていないこと、免疫反応であるサイトカイン放出症候群によって試験中に2名が死亡したことなどこれらの対応が今だにできていません。
現在、キメラ抗原受容体T細胞療法の効果が高く評価されると同時にこれらの副作用や想定される問題点などをいかに克服するかが研究され続けています。
キメラ抗原受容体T細胞療法の費用
ネックのひとつであるキメラ抗原受容体T細胞療法の医療費は、5000万円かかるとも言われており、現実的にキメラ抗原受容体T細胞療法が一般的に利用されることはまずない、というのが専門家の考えです。
誰もが受けられるようにすることが重要ですが、それは現段階では金額的に無理だろうということです。現実的に治療方法が確立しても費用面が障害になり治療が受けられない可能性が非常高い治療方法でもあるのです。
キメラ抗原受容体T細胞療法の研究
白血病などの血液がんから固形癌まで研究が進められ、さらにHIVなどの別のウイルスに対する治療研究も進められています。
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